Q 最近いろいろなところで休養の重要性が叫ばれるようになりました。単にからだを休めるだけでなく、ほかにも意味があるのでしょうか。
A 休養というと、まず、運動やさまざまな活動の後の疲れをとるという身体的な
疲労回復が考えられますが、最近では、デスクワーク主体の仕事が増えるにつれ、精神的な
疲労からの回復も休養に求められています。
一方、余暇には、仕事や労働から解放された自由な時間に、文化活動や創造活動、地域活動などを通して、自分を磨いたり希望の実現を図るといった高次元の意味合いが含まれています。
今までは、休養は仕事や活動からの心身の疲労回復という面が強いのに対し、余暇は労働そのものに対応する、より社会的、文化的なものと位置づけられてきました。
しかし、最近は休養にも余暇におけるような高次元の役割が期待されるようになり、両者の意味は接近したものになっています。そこで、同じ休養でも、過ごし方によって質的に違うものになると指摘されるようになりました。
例えば、疲労回復を図る従来型の休養は受け身的休み方で、時間の短い休養はこうした傾向になりがちです。一方、長時間の休養は、進んで体力や精神状態の向上を図るとともに、将来への準備や備蓄など生活の質につながる能動的な休養と考えられています。
Q 同じ休養でも、時間の長さや使い方によって、持つ意味が異なるということでしょうか。
A 休養には「休む」ことと「養う」ことの二つの要素があります。「休」は心身の疲労からの回復を目指した受け身的な部分。「養」は、さまざまな活動をとおして生きがいやライフスタイルの創造を行う積極的で能動的な部分です。
これからの休養は、「養」の部分がますます重要になってきます。まず、努めて「休み」をとり、その時間の中で心身の健康を「養う」ことが必要で、そこで初めて「休養」となるのです。
ところで、同じ休養でも、時間の長短によって休み方のスタイルが変わり、「養う」内容も異なってきます。
@休息
一息つく秒単位、分単位の休みです。流れ作業や休みなしの運動など、そのまま続けることができなくなったときに自発的にとる休みで、ほとんど「養」の部分はありません。
A休憩
休憩時間という言い方があるように、30分、1時間といった時間単位の休みで、多少は「養」の部分も確保できます。労働基準法でも、6時間を超えるときには少なくとも45分、8時間を超えるときは少なくとも1時間の休憩が保障されています。
B私的時間
私的時間は、一日24時間の中で、労働にかかわらない時間を指します。この間には睡眠や食事、排泄など
健康維持に欠かせない生理的欲求が満たされると同時に、対人関係を維持したり、教養のための
投資など、「養」の比重も高くなります。
私的時間と類似したものに自由時間がありますが、これは私的時間から睡眠や食事などを除いた、生理的にも自由な時間です。
C週休
一日とか二日とかいった日にち単位の休みである週休は、通常、地域社会で過ごすことが多いので、これをどのように個人の主体性に基づくものにするかが大切です。特に、これからの高齢化社会に備えて、週休を地域でのボランティアやサークル活動などの社会参加にあてるなどして幅広い人間関係の形成に努めるのも、休養の重要な要素になっていきます。
D
休暇 休暇は元来、お祭りや祝祭日などの「ハレ」の日であり、日常生活からの脱却を意味しています。職場や家庭での決められた役割から解放されることは、自分の隠れた部分を発見し、自己実現や自己開発のための機会になります。
Q 厚生省から発表された「健康づくりのための休養指針」について、教えてください。
A 「健康づくりのための休養指針」は、生きがいづくりや自己実現、新しい人間関係の形成など、将来の人生設計をにらんだ内容を休養に盛り込んでいくことが大切だということを念頭に置いて策定されました(表1)。四つの柱について、簡単に見ていきましょう。
@生活リズム
精神的ストレスが多いと生活リズムが乱れがちです。ストレスに早めに気づいて、すみやかに対処したいものです。この場合、周囲の人にも気づいてもらうことが大切です。
睡眠も重要。時間的な長さより、気持ちよい目覚めが得られる質のよい眠りを目指したいものです。
さらに、入浴は、精神的な疲労や緊張をときほぐし、代謝や循環といった生理的な機能にも効果があります。
ところで、心の切り替え方にはいろいろな方法がありますが、
旅行は単調になりがちな生活にメリハリをつけ、日常から離れた新しい
出会いや発見を期待できます。
このようなこととともに、生活全体のリズムを考えて、休養と仕事のバランスをうまくとることがいわゆる過労の防止につながります。
A時間的要素
一日の中で30分でも自己を取り戻すための時間をとることは、休養の第一歩。さらに、休暇をとって、趣味や
スポーツ、ボランティア活動など、「養」にかかわる活動をすることによって、楽しみや生きがいも生まれてきます。
B空間的要素
生活環境にうるおいを持たせることが大切です。食事のひとときも、
リラックスした気分で食卓を囲めるように、食事空間にバラエティを持たせたいもの。また、自然と接する機会を多くすると、心が豊かになります。
C社会的要素
サークルやボランティア活動などに積極的に参加すると、幅広い人間関係をつくることができ、有意義な休養になります。しかし、義務感が強すぎるとストレスになりかねないので、無理のないように。
Q 自分なりの休養を設計するためには、どんな注意が必要ですか。
A 「健康づくりの休養指針」の内容を、積極的に日々の生活に取り入れていくためには、生活の中に適切に休養が取り入れられているか再点検することが大切です。
そのためには、休養は自己回復のためにあるという視点から、@自分のために時間を使う、A自分のために何かを創る、B自分は大自然の一部であって、人々の輪の中で支えられているという自覚を持つことです。そのうえで、日ごろから自分なりに、休養をいつ、どのようにとっているか、生活のリズムは乱れていないかなどをチェックします。
また、ストレスチェックリスト(表2)などを使って自分の精神状態をチェックして早めにストレスに対処し、セルフコントロールによって心を切り替えることも必要です。筋弛緩法や自律訓練法、メディテーション(瞑想)、受動注意集中(ぼんやりと浮かんだ思いに気持ちを向ける)、カタルシス(自分の悩みなどを信頼できる人に話す)など、いろいろな方法があります。
さらに、休養するときには、予備時間として意識的に何もしない空白の時間も必要です。本来の自己の発見や自己の確立、ストレスコントロールに役立ちます。
ところで、休養の意識を再認識し、個人の生き方そのものにまでかかわる問題として捕らえるためには、「発想の転換(パラダイムシフト)」が必要です。
@休暇は権利であるとともに自分への義務
A疲労回復や労働力再生産のためから自己実現や生きがいのために
B家族サービスから個人の内面的再統合のために
C会社、職場中心から家族、友人主体へ
D数日単位から数週間単位へ
E休暇の中にも緩急を持たせ、移動型から滞在型へ
このように、休養を個人の問題として閉じ込めてしまうのではなく、社会性、文化性を持たせたものに広げていくことが大切です。
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